健康

全身性エリテマトーデスの症状と治療について!検査の診断基準は?

なんだかすごく眠い、だるい、疲れやすい・・・。もしかしてそれはSLEの症状かもしれません。SLEは英語で Systemic Lupus Eryhtematosus といい、日本語では全身性エリテマトーデスという病気の名前です。Systemic は全身という意味で、Lupus Eryhtematosus はオオカミ(狼)に噛まれた痕という意味です。Lupus はループスと読み、ラテン語で狼という意味の単語です。

皮膚に現れる発疹がまるで狼に噛まれた痕みたいに紅斑(蝶形紅斑など)となることからこのように名付けられました。全身性エリテマトーデスは国の難病に指定されていて、申請している人の数だけで6万人、ちゃんと病院で検査をしていない人を含めると10万人も患者数がいると推定されています。以前は有効な薬がなかったことから合併症により余命は5年程度とされていましたが、現在の余命は、5年後の生存率でいうと95%まで劇的に改善しています

 

膠原病の一種

全身性エリテマトーデスとは膠原病(こうげんびょう)の一種で、自己免疫疾患です。Bリンパ球が異常に活動的になり、体を構成している細胞の中にある核の成分に対する抗体(自己抗体)が作られてしまうために、皮膚に写真の様な炎症が発生したり、ループス腎炎になったりして全身の臓器に影響が及びます。

慢性の病気なので完治することはほぼなく発症したら一生つき合っていく病気となります。ただし、副腎皮質ステロイド薬やシクロホスファミド、アザチオプリンといった免疫抑制薬による治療によって、長期の寛解期(回復期)を得ることが可能となっています。伝染はしません人にはうつりません)。

 

ストレスも原因に

全身性エリテマトーデスになってしまう原因としては、紫外線、感染症やストレス、遺伝的要因があると考えられています。一卵性双生児の片方が罹患している場合、もう片方がSLEを発症してしまう確率は約50%というデータがあります。

女性は男性と比較して10倍の患者数がいて、出産適齢期である20歳から40歳の間(特に20歳代)に罹患する人が多いことから、発症の原因として女性ホルモンの関与があるようです。

膠原病とは病名ではなく概念のようなもので、自己免疫現象により全身の臓器に炎症が起こる病気の総称のことです。膠原病には全身性エリテマトーデスのほかに、シェーグレン症候群、関節リウマチ、強皮症、皮膚筋炎、ベーチェット病、コーガン症候群などがあります。

全身性エリテマトーデスにかかった芸能人は、酒井若菜、宝塚の安奈淳、声優の後藤邑子(特発性血小板減少性紫斑病に罹患していた)などです。海外では、マイケル・ジャクソン、セレーナ・ゴメス、レディーガガ、スヌープ・ドッグ(ラッパー、俳優)などです。

全身性エリテマトーデスの症状

全身性エリテマトーデスの初期症状は、1ヶ月以上続く発熱(38度から場合によっては40度近くの熱が出ることもある)、風邪のような症状、全身の倦怠感(だるい感じ)、関節や筋肉が痛む、食欲がない、リンパ節やリンパ腺が腫れる、口の中が乾く、口内炎、結膜炎などが挙げられます。

 

少し病状が進むと、以下の写真のような症状が現れます。

・ 蝶型紅斑(読み方:ちょうけいこうはん)という鼻をまたいでほっぺにできる画像のような赤い発疹。バタフライ・ラッシュとも呼び、日光暴露で悪化します。患者の約半数に現れます

・ 触るとざらざらしている写真みたいなディスコイド疹という紅班。顔、耳、頭、首、腕などに発生しやすいです。この円盤状皮疹は画像のように最初は縁が赤っぽくまるでコインのような見た目をしていますが、時間の経過とともに硬結、角化して瘢痕を残すようになります。

 

・ 日光過敏となり、紫外線を受けると皮膚に発疹や水ぶくれができて、画像みたいに肌が赤くなったりもします。

・ 寒冷刺激(寒いところで肌をさらす)や精神的ストレスによって手や足の末端の小動脈が痙攣を起こし、手の指が真っ白になります。これはレイノー症状といって、冬に発生しやすく、罹患者の約25%に現れる症状です。蒼白になったあとは紫色になり、その後20分程度で赤色になり、回復します。手のしびれや痛みがある場合もあり、レイノー症状が重症になると潰瘍になることがあります。

 

・ 口内炎と脱毛(大量に髪の毛が抜けます)

・ 関節炎による関節痛。ただし、同じ膠原病でも関節リウマチのように関節の骨の変形や破壊は起きません

・ 腎不全の原因になるループス腎炎。診断されたあと1年以内に発症するケースが多く、ループス腎炎になる確率は約50%(臨床的にはっきりした数字だけで50%)。発症の原因は、糸球体腎炎による免疫複合体沈着であり、ネフローゼ症候群になることもあります。膜性増殖性糸球体腎炎または膜性腎症の病態と同じになることがあり、タンパク尿や体のむくみ(浮腫)といった症状が現れます。ループス腎炎はステロイドによる治療法が確立されていなかった時代は全身性エリテマトーデスによる最大の死因でしたが、現在では人工透析(自己負担額は月に1万円から2万円)で治療が可能であるため死亡することはありません

・ 中枢神経性(CNS)ループス(central nervous system lupus)によるうつのような症状、統合失調症のような精神症状、痙攣や髄膜炎。うつは全身性エリテマトーデスの症状ですが、ステロイドの副作用としても発症する可能性があります「一生治療を続けなくてはならない」という事実そのものがうつを引き起こすことが多いです。

・ 漿膜炎(心膜に炎症が起きる)として心外膜炎(心タンポナーデに進展することもある)、リブマン・サックス心内膜炎(Libman-Sacks endocarditis)、心筋炎の発症。さらに、虚血性心疾患として狭心症や心筋梗塞の発症。

 

・ 肺では胸膜炎、肺炎(ニューモシスチス肺炎やサイトメガロウイルス肺炎)。ニューモシスチス肺炎はステロイド剤の長期使用やエイズ(AIDS)などによって免疫力が低下しているときに起きる日和見感染症です。サイトメガロウイルス(CMV)は日本人の85%前後は感染しています。不顕性感染といって普段は症状は現れなくても、細胞性免疫が障害されると発病します。

・ 便秘、下痢、腹痛、吐き気といった消化管からくる症状。

・ 血小板や赤血球、白血球が減少し、出血しやすくなったりケガが治りにくくなったりします。出血斑が全身に生じたり、貧血を起こしたりします。

・ 視神経が傷ついて目が見えなくなる(失明)ことがあります。ずっと頭痛がするループス頭痛(lupus headache)も発生します。

・ 肝機能障害の一つとして、ルポイド肝炎(類狼瘡肝炎:lupoid hepatitis、コルチコステロイド剤で治療する)、脂肪肝(肝臓に中性脂肪がたまってしまう病気)、原発性胆汁性肝硬変(胆管の細い部分が損傷してしまう病気です)、膵炎(ステロイドによる治療の副作用としても発症します)が発生します。

・ 自己免疫障害によってループス膀胱炎(間質性膀胱炎)に罹患する。

 

以上のような全身性エリテマトーデスの症状が現れても、寿命が短くなってしまうのでは?と心配する必要はありません。現在はステロイド剤(プレドニゾロン)という有効なお薬がありますので、寿命のことを考えて悲観的にならないようにしましょう。

うつになってしまったらその方が治療が難しいぐらいですSLEの人は疲れやすく、貧血になりやすいのでめまいも感じやすいです。めまいを感じたら職場でも学校でも休憩して無理をしないようにしましょう。

 

ステロイドで治療します

全身性エリテマトーデスで発生した免疫異常を治療するには副腎皮質ステロイド剤の経口投与(経口ステロイド療法:錠剤などを飲む)が必要です。ステロイド抵抗性が強い場合などは、まずはステロイドパルス療法といって、通常投与する量の10倍ほどの量(500mgから1000mg)のステロイド薬を3日間にわたって点滴する治療が行われます。その後、重症度を考慮してプレドニゾロン(PSL)というステロイドを経口投与します。

ステロイドホルモンは人間の体の中で2.5mgから5mg(PSL換算)ほど分泌されていますが、副腎皮質ステロイド剤の投与を始めると、副腎皮質からステロイドホルモンが分泌されなくなってしまいます。ですので、急に投与を中止したり量を急激に減らしたりすると体内のステロイドホルモンが足りなくなって、血圧低下などのステロイド離脱症候群と呼ばれる副作用が生じます

初期の投与量は20mgから60mg(1日あたり)として、治療の効果が十分でたと判断すれば2週間から4週間ごとに5mgから10mgずつゆっくり減量(テーパリング:Tapering)します

ネオーラル(シクロスポリン)やプログラフ(タクロリムス)、シクロホスファミド(エンドキサン)、MMF(セルセプト)、ミゾリビン(ブレディニン)などの免疫抑制剤やプラケニルという免疫調節薬が使用されることがあります。これらの薬剤は、ステロイドの投与だけでは病状をコントロールできない場合やステロイドの減量がうまくいかなかった例で使用されます。

 

検査と診断基準

全身性エリテマトーデスの検査をするときには国際的に定められた診断基準を使います。抗核抗体陽性(Antinuclear antibody)、免疫学的異常(抗DNA抗体、抗リン脂質抗体、抗Sm抗体が陽性である。血清梅毒反応が偽陽性である。)、血液学的異常(Hematologic disorder:白血球の減少、リンパ球の減少など)、顔面紅斑(蝶型紅斑:Malar rash)、円板状紅斑(ディスコイド疹:Discoid rash)、日光過敏症(Photosensitivity)などの診断基準のうち4項目以上を満たしている場合に罹患していると診断されます。

検査のときの抗体価は、血液中の血清を2倍ずつ薄めて、どれだけ薄めれば細胞核に対する反応がなくなるかで決定されます。抗核抗体の数値に関しては最初の検査の際に40倍まで薄めますので、2倍ずつ薄まるということは、40倍、80倍、160倍、320倍、640倍、1280倍・・・という数値となります。

 

しかし40倍だったら間違いなく膠原病なのかというとそうではなく、40倍でも健康な人は20%ほど、80倍でも約10%、160倍なら約3%、320倍だと約1%存在します。この抗体価が異常に高いからといって病状を心配しすぎないようにしましょう。抗体価は病勢との相関関係はあまり強くないのですが、実際に全身性エリテマトーデスになった人のブログを見ていると相関関係がある人もいるようです。完治は難しい病気ですが、抗核抗体が陰性になり、症状がほぼ出なくなる人はいます

完治したと思ってもそれは単なる寛解期であるケースが多く、またぶり返すこともあります(この膠原病は再発率という考え方をしません)。ただ、繰り返しますが生存率は95%以上あり、きちんと病院で治療を受ければ仕事にも影響はなく予後は良好です。寿命の心配などしなくても大丈夫です。

 

妊娠への影響

全身性エリテマトーデスは妊娠に影響を与えます。ただし、出産に際して以下のような条件を満たすことができれば流産のリスクは減ります。妊娠している時点でSLEの症状が軽いこと、臓器障害がほぼないこと、副腎皮質ホルモン剤の量が少ないこと、免疫抑制剤を使用していない、産婦人科の医師から出産は大丈夫と言われていること。

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